
タイトル:ゴールデンカムイ 網走監獄襲撃編
原作:野田サトル
監督:片桐健滋
形態:映画
既か未か:未
『ゴールデンカムイ 網走監獄襲撃編』みた。
前記事でドラマの話したやつの続編。物語的には主人公の1人・アシリパの父がもしかしたら全てを仕組んだのっぺらぼうと同一人物かもしれない、だから網走刑務所まで会いにいって確かめようという話。もし、アシリパのパパがのっぺらぼうなら金塊のありかを聞く事もできるはずだ。
ドラマまで色々やって想定以上に展開が早いのは全てこの「網走監獄編」を映画化するためだったっぽく、調べた感じ今のところ続編の予定は立ってなさそう。漫画ではこのあと、「樺太編」、「札幌編」、「五稜郭編」(うろ覚え)みたいな感じで続いていった気がするのでぜひ映像化してほしいところ。
本作の原作となった「網走監獄編」は諸々の真実が明らかになったり?、今まで出てきたキャラ達が一堂に返してわちゃわちゃするということで人気の高いエピソード。当然俺も大好きだ。もはやここが面白すぎて以降はダレてるとか言われるレベル。ワンピで言ったら「頂上戦争」、呪術なら「渋谷事変」、他にも「大規模侵攻」とか「インフィニティ・ウォー」とか、参照元がだいぶ偏ってる気がしないでもないがそんなところだ。
せっかくドラマも見たし、この実写化にはだいぶ力が入ってるっぽいのでこっちも割と姿勢を正して見た。結論から言うと流石に面白かった。正直、原作からして面白すぎるし、変に改変したりとかしない実写化なのでおもろい以外の感想はあんまり出てこない。漫画とかアニメ版を全部見て感想書く機会はない気がするので個人的金カム総論も交えつつ本作の感想を書いていこうかな。
ネタバレあり
「不死身の杉元」の異名を持つ日露戦争の帰還兵・杉元佐一(山崎賢人)はアイヌ民族から強奪された莫大な金塊の噂を知る。金塊を奪った男・のっぺらぼうは網走監獄に捕まる直前、金塊を隠し、収監後、そのありかを記した刺青を24人の囚人の体にほり、脱獄させた。杉元は脱獄囚の刺青人皮を集める金塊争奪戦へ巻き込まれていく。杉元の相棒は父をのっぺらぼうに殺されたアイヌのアシリパ(山田杏奈)。そして脱獄囚の1人・白石(矢本悠馬)だ。時を同じく金塊を狙うのは陸軍第七師団の鶴見中尉(玉木宏)、そして脱獄囚のリーダー的存在・土方歳三(舘ひろし)。争奪戦が盛り上がる中、杉元達はアシリパの父・ウイルク(井浦新)のかつての友・キロランケ(池内博之)と出会う。キロランケはのっぺらぼうこそアシリパの父であると告げる。一方で幼い頃、ウイルクと共に過ごしたアイヌの女性・インカラマッ(高橋メアリージュン)はキロランケが嘘をついているとアシリパに忠告する。杉元達は土方一派と合流。どちらが正しいことを言っているか確かめるためにも、協力して網走監獄ののっぺらぼうに会いにいくことを決意する。
各登場人物が多すぎるが、そんな大量のキャラがわちゃわちゃするところが今作の魅力なので一応このブログにも記載しておこう。
・杉元一派
主人公達のチーム。杉元とアシリパさん、脱獄囚の1人で脱獄王の異名を持つ白石が主なメンツ。ここにアシリパさんの祖母・フチの不安を解消するために駆けつけた谷垣源次郎と谷垣と行動を共にするインカラマッ、チカパシ(アイヌの親なき子供)が同行。また、キロランケも加わる形となる。キロランケがのっぺらぼうの正体をアシリパの父・ウイルクだと教えるところから、この網走監獄襲撃が持ち上がる。
・土方一派
脱獄囚達のチーム。リーダーは新撰組・鬼の副長土方歳三。歴史上は土方は死んでいるはずだが実は幽閉されていたという設定。チームには脱獄囚ではないが新撰組のかつての隊員・永倉新八が加入。脱獄囚では強すぎる男・牛山や人喰い殺人鬼の家永、今作冒頭で仲間に入る盲目のガンマン・都丹が参加。また、鶴見中尉の元からの脱走兵のスナイパー・尾形、網走監獄の看守で内密に繋がっている門倉、ドラマ版でヤクザ抗争編がカットされたせいでなぜ仲間になっているかガチでわからんくなった夏太郎らがいる(夏太郎はアニメの網走編では存在自体がカットされてるので出れるだけ良かった。)。土方の目的は北海道の独立であり、そこにはどうやらのっぺらぼうの存在が関わっている可能性が高い。

・陸軍第七師団
第七師団の中の鶴見中尉率いる一部のメンバーで構成されたチーム。鶴見の右腕の月島軍曹や杉元に恨みを抱いている二階堂、網走監獄にスパイとして所属するも即バレした宇佐美上等兵や薩摩のボンボン・鯉登少尉がいる。また、鶴見中尉は情報将校であり、手に入れた弱みやコネを使って上層部を動かしたりもする。本作では鯉登少尉の父・鯉登少将の強力により軍艦を使って監獄に攻め入る。鶴見中尉らの目的は新しい軍事政権の樹立だ。先の日露戦争では鶴見中尉の提言にもかかわらず無駄な戦力が203高地につぎ込まれ鶴見は部下を大量に失うことに。表向きにはこの無念を晴らすべく金塊を探す。鶴見中尉は人たらしで鯉登や宇佐美をたらしこめている一方、真の目的が別にある様子だがこの映画内では気にせんで大丈夫。

・網走監獄
一大勢力ではないが監獄の典獄・犬堂は金塊の噂を聞きつけ、のっぺらぼうを貴重に隠すとともに土方への執着心を持っている。その理由は自身の兄が新政府軍として戊辰戦争で殺されていることによる。また思想的にも土方に看破されてしまう(後述)。刑務所の看守・門倉は先ほども言った通り、土方に内通している。
多いが仕方ない。ドラマを通じて杉元達と土方一派は網走襲撃のために一時的に協力することに。あらすじでも述べたとおり、インカラマッとキロランケの様子が怪しいところだ。
本作は序盤、ラッコ鍋から始まり、vs都丹をやって監獄襲撃という形へ。予想通り、姉畑先生と稲妻強盗はカットされた。されたが、姉畑らしき人物は回想でチラッと写り、稲妻強盗は登場フラグが張られるなど「やる気はあるんよ…」という空気感を感じることはできた。まあただ、調べた感じwowowは比較的ドラマの話数とか自由っぽいんで話数増やしてまではやらんかったあたり、今後も相当余力ができない限りはやらないでしょう。姉畑とかはむしろやらなくていい。
逆にラッコ鍋はかなり力入れて丁寧にやっており、アシリパ達が真剣な話してる裏で男どもが相撲取ってる馬鹿馬鹿しさは「ゴールデンカムイ」を感じれて良かった。怒る人もいそうだが、2作目なんでこんくらい飛ばしていいでしょう。
俺の右後ろくらいに座ってた人が下ネタのシーンだけ聞こえてくるような鼻笑いをしてたが、あれは腐女子だったのだろうか。感想のところに「ラッコ鍋のシーン、誰がそこまでやれと言ったww」みたいなことを書いてそうだなとか考えてしまって気が散った(腐女子っぽい感想を書きたかったが意外とむずい)。まあ腐女子じゃなくてこっちが悪い。ごめん。あと、右前の客が光が漏れてる電子時計をチラッチラ見てて腹立った。洋画は人少ないから見やすいが邦画はこういうこと起きがち。洋画に人気になってほしいが人気になると鑑賞体験が損なわれうるという矛盾(昨日見に行ったビーバーも人気作なので人が多く、隣の隣くらいのやつがスマホ触りまくってて殺そうかと思った。4DXなのに。さらにクソどうでもいい話をすると、『リトル・マーメイド』を見に行った時、開始前からずっとスマホを触ってるやつがいて、シンデレラ城のシークエンスのあたりでまあまあデカ目の声で注意してる人がいた。彼のおかげで映画に集中できた。彼の勇気をこの場を借りて讃えたい)。
冒頭からいきなりキロランケニシパが裏切ってるだのなんだのやるが、まあ地上波でもドラマ総集編やったのでいいか。今作からいきなり見た人、または前作だけ見てドラマ飛ばした人に感情移入しようかなと思ったが、もう俺は漫画もアニメも見てるので厳しかった。後半でいろんな人がいろんな考えに従って裏切ったりするが、この映画1本でそこに移入するのは流石にムズイ気がする。まあ、みんなでご飯食べるシーンとか(原作からしてそうだが)で補強されてる、頑張ってるとしておこう。普通にドラマちゃんと見たほうがいい。クオリティ高いし。
そして網走監獄襲撃へ。正直、初見だとややこしい気がする。俺なんて最初はキロランケと谷垣の区別がついてなかったのでめちゃくちゃ混乱した。物語的には門倉の協力もあり、刑務所に侵入する一行。のっぺらぼうと会うのは杉元、アシリパ、白石の3人だが、のっぺらぼうと会ったところ、アシリパは彼が父ではないと言う。ウイルクはアシリパと目の色が一緒とのことだったが、全く違う。どさくさに紛れてアシリパは都丹に回収され監獄に置いていかれる杉元達。実はのっぺらぼうは偽物だった。本物を犬堂典獄が隠していると予想した土方はこのような形でわざと騒ぎを起こすことによって不安に駆られた犬堂が本物の元に行くことに賭けた。
しかし、騒ぎはそれだけでなく、陸軍第七師団が突入してくる。インカラマッは鶴見中尉と通じていた。インカラマッの目的はアシリパとのっぺらぼうの救出。杉元たちが失敗し、もはや無事にアシリパ達を救出できるのが鶴見中尉しかいないと考えて計画を共有していた。そんなんわけで三組に網走刑務所サイドを加えた4組の混戦状態。犬堂と土方が手錠デスマッチしたり、杉元が二階堂と戦ったりする。
犬堂は土方に恨みを抱いており、それは兄だけでなく、思想的なものが関与している。新政府側となった犬堂含む九州の武士達は体裁的には尊王攘夷として天皇を再び敬うとするものだが、実態としては徳川家、ひいては江戸幕府への裏切りによって成立している。一方で武士としての忠義を最後まで果たした旧幕府軍が殉職してしまっては、土方らは最後まで忠義に生きた神話として讃えられてしまう。新政府側として忠義を教えねばならん立場にいるにも関わらず、真に忠義を果たしたのは旧幕府軍という矛盾に耐えられなかった犬堂。犬堂はそのような忠義を否定するために土方を投獄して生かしていた。いつの日か、土方が自身に跪けば、忠義などなかったと否定できる。しかし、脱獄され挙げ句の果てに、デスマッチは土方の勝利に終わり殺されてしまう。犬堂は我々の身の回りにもいる感じの自己矛盾を認めることができないやべーやつだ。このシーン、映画だと元々内容がむずい上に舘ひろしがボソボソ喋りすぎて何言ってるかわからなかったのが勿体無い。実写だが、インカラマッの回想みたいにモンタージュ入れまくって何言ってるか分かりやすくしてほしかった。
一方で杉元サイド。杉元は逃げ出したのっぺらぼうと対面。色々あってインカラマッと谷垣、キロランケ、白石と合流したアシリパ。アシリパは屋根の上から遠巻きにのっぺらぼうと再開することになる。正体はもちろんアシリパの父・ウイルク。杉元は金塊争奪戦にアシリパを巻き込んだことをウイルクに激昂する。「ヒンナヒンナしててほしいんだ」は大好きなセリフなので言ってくれて良かった。アチャ(アシリパのウイルクの呼び方)はアシリパの存在を確認し、近くにいる杉元に金塊のありかを伝えようとする。杉元にアイヌを殺したのは自分ではないこと、そして金塊について伝えようとした瞬間、のっぺらぼうは狙撃され死んでしまう。同時に杉元も脳を打たれ損傷。アシリパ達はやむなく逃げることとなる。
インカラマッはアシリパがアチャを確認した時、キロランケが誰かに合図したのを見ていた。キロランケは揉み合いの末、インカラマッを刺してしまい逃亡。白石、アシリパと改めて合流し、インカラマッが裏切り者だったと伝え船に乗る。そしてその船に乗るべく合流したのはスナイパー・尾形だった。合図されてのっぺらぼうを撃ったのも尾形。残された杉元一派は鶴見中尉に確保されてしまう。
だいたいこんな感じの内容。これは漫画からしてそうだが、「のっぺらぼうが偽物(土方達の裏切り)」→「陸軍襲撃(インカラマッの裏切り)」→「のっぺらぼう射殺(キロランケ、尾形の裏切り)」と展開がどんどん進んでいくので面白いことこの上ない。それぞれの裏切りが単なる賑やかしじゃなく、キャラの思想に沿って進んでいくのもすごく良い(だが、今映画だけではキロと尾形がなんで裏切ったのかはわからんが)。あいだあいだで強すぎる牛山とか見たいなギャグを挟んでくるのも楽しい。ゴールデンカムイってそういうとこある。決して感動シーンをすかしてるわけではない感じがするのはいいところ。
最初に例を挙げた「頂上戦争」とか「渋谷事変」と比べると(比べること自体が無粋というのは置いといて)、終盤の盛り上げが新キャラ投入じゃないってところが最高のアツさにつながってると思う。特に忘れてた要素の回収って意味ではワートリの「大規模侵攻」にも近しい。そういや尾形!ってなるもん。冷静に考えたら、作中キャラがそんなに戦いまくってないのも意外だ。杉元は二階堂と、土方は犬堂と戦うがそんくらい。もっと色々起きてる印象なのに。
本当に強いていうなら陸軍側のキャラが弱め(物理的な強さ)なので土方とかと渡り合えるやつがいたら良かった。ただそんな奴いたら鶴見中尉の下につかずにもっと中央に行ってるとも思うので難しいところ。
実写的には、やっぱ最初のOPがめちゃくちゃワクワクした。「これまでのあらすじ」大好きなので。一番大きめの改変が(それでも小さいが)、杉元の活躍シーン増加で刑務所のモブ囚人をいっぱい倒してた。アクションがすごい良かったのでほんと頑張って作ってくれたんだなと思う。理解までの作品数のハードルはあるものの、単純娯楽作として強度がめちゃくちゃ高い良作ではないでしょうか。福田雄一とかは見習って欲しい。
唯一もったいないのが尾形の過去編カット。これは今後になるのかな?今作だけだと、尾形がなぜ裏切ったのかガチで訳わからんので過去があったらとっつきやすいのにと思った。キロランケに関しては「大国に飲み込まれる」とかパルチザンだったとか語られるのでなんとなくわかるし、キロランケ自身が無駄な加害行為(杉元狙撃やインカラマッ傷害)に難色を示していたのでいいと思う。でも尾形がガチでわからん。そもそもこいつはなんで鶴見中尉を裏切ったのかも覚えてない。原作からして忘れたわ。死に様は衝撃的だったので覚えてるけど。というか覚えてはいるものの言語化しづらい。この辺のニュアンスをちょっとでも感じ取ってもらうためにも過去編は必要だったと思うよ。
正直、大した金塊の謎は明かされず、刺青自体も一枚しか増えてないので「繋ぎ」でしかない映画なんだが、面白すぎるからいいでしょう。ここが面白すぎるせいで「樺太編」とかの映画化を躊躇する気持ちはわかる。ってか樺太はドラマでもいいやろ。
ゴールデンカムイ的には「囚われた人々」の争いを描いてると思うので、それを言語化してくれるインカラマッの今作のワンシーンは大事。全部見てめちゃくちゃ面白かった。けど、アシリパと杉元の関係にもっとメスを入れてくれても良かったかもね。今作でもある通り、アシリパと杉元の関係はインカラマッとウイルクの関係に並置されており、杉元がアシリパの元からいなくなってしまうかも…見たいな内容でもあるはずだ。一応ここは最終章でラスボス戦、一緒に行こうぜ!的に回収自体はされるが、また別の、梅ちゃん路線でも回収してほしかった。してたとしたら忘れてるだけなのでごめんなさい。
今後の実写展開はどうなうんだろう。流石に樺太はドラマだろう。「いわば」とラストは映画で見たいな。網走以降、ここが見てぇってのは、もうあとはキロランケ死ぬシーンとかしかパッと出てこないな。こっからは鶴見中尉大活躍なので玉木宏には頑張ってほしい。早いとこ続報を待ちます。