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【感想】『私がビーバーになる時』/ここ最近のディズニー系作品で群を抜いて「楽しい」映画

タイトル:私がビーバーになる時

  監督:ダニエル・チョン

  形態:映画

既か未か:未

 

『私がビーバーになる時』みた。

 

ピクサー最新作。最近のピクサーNewsの話をすれば、ラセター退任後のCCO・ピート・ドクターが「LGBTQとか…やめるわ。」的なことを言ったという記事が出て(主に俺の周りで)炎上。それに対して「おいおいよく記事を見てみろよ?LGBTQには言及してねえぜ?」みたいな逆炎上が行われ、「でも文脈的にはそう言ってんだろ!」みたいなことが起こっていた。ピート・ドクターは立場の問題もあると思うし、アメリカ人ってのは発言をコロコロ変えるでお馴染みなので、まあそこそこ気にしつつもね…ってのが俺の考え(具体例はソー4公開前にノリノリだったのに公開後、即「ふざけすぎた…」ムードになったクリヘムとワイティティ)

作品を好きな人には悪いが検閲によってクィア表象が消された『エリオ』はクソだったと思ってるので、LGBTQ出すことが直接の不調の原因ではないと思う。純粋に作品の力の弱さではないのかね。そんな中、久しぶりに「強い」と思えたのが本作。

 

2年前のD23かなんかで「これからのディズニー作品群はこれだぜ!」ドンッをやられた時、あり得ないほどの続編と実写リメイクの量に絶句したのを覚えている。トイストーリー5でバズが100体出てくるよ!と聞いた時は、もはやおもろかった。そんな中で唯一の完全新作が『Hoppers(本作の原題)』だった。

 

ディズニー逆懐古ファンとしては完全新作のこれをなんとか応援せねばならん。と言うありえんほど不純な動機で本作の応援を開始。とは言うものの正直あんまり期待してなかった。今となっては杞憂だが、人当たりがいい後輩を見て「この子、成功して欲しいけど、能力は足りんよな…。」と思ってしまう感じに似ていた。まさにそんなこの本作は結果的にすごく良かったわけだが。本作への期待値が上がったのはわりかし最近。Rottenで高評価らしいってのと同時に敵キャラ・ジェリー市長の最高な動画が出たことによってだ。そんなわけで外部事情に振り回されながら見たので本来の自分軸での評価はもはやすることはできなかった。

 

まあでもそんな状況関係なしに見ても、今作ははっきり面白かったでしょう。なんか体感だが、久しぶりに「ピクサー」を見た感じがした。その辺は要分析。動員がどうなるかはよくわからんが、初日昼に見に行って、春休み中のキッズや大人がごった返していたので期待したいところ。本作は無理矢理じゃない限りは続編とか作れなさそうな感じだったので、本IPじゃなく、新作に力を入れていく風潮を与えてくれたら嬉しかったりする。

 

ネタバレあり

 

メイベル・タナカ(パイパー・カーダ)は幼少期を祖母(カレン・ヒューイ)と共に過ごしていた。祖母の家の近くには森があり、そこでは多くの生き物が暮らしていた。メイベルはそんな森で過ごすのが大好きだった。時がたち、メイベルは19歳に。森があるビーバートン市の市長・ジェリー(ジョン・ハム)は森を環状高速道路に置き換える計画を発表。なぜか森には動物がいなくなってしまっており、道路建設の許可が下りたのだ。メイベルは森を守るために奔走するが、その結果、大学の授業をおろそかにしてしまい教授のサム(キャシー・ナジミー)から注意を受ける。森に動物を呼び返すためにビーバーをが必要だと考えたメイベルはビーバー捕獲作戦を決行するが、現れたビーバーは攫われてしまう。行き着いた先はメイベルの大学で、ビーバーはサム教授の「ホッパーズ計画」によって作られたロボットだった。

 

予告見た人は知ってると思うが、ロボビーバーに意識を移し替えて、『アバター』みたいな感じで森の仲間たちに溶け込むと言うのが「ホッパーズ計画」。ホッパーズ計画はサムが動物をより身近に観察するために作ったものだった。ちなみにサムは女性。サマンサの愛称がサムらしい。勉強になるね。メイベルはこの技術を活用して森を救おうとする。本作は途中からちょいちょい空気感は変わるものの序盤はよくある環境保全アニメ映画に近く、『ロラックスおじさんの秘密の種』や、まあ森の動物でワイワイ系と言う点では最近の『野生の島のロズ』が想起される。

 

序盤から結構楽しく、ジェリー市長は本作のヴィランっぽいが、森を守りたいメイベルと楽しそうに言い合いしてたりする。亡きおばあちゃんとの大切な場所である森を壊されそうと言うのはメイベルに同情できるところだが、ジェリーはそのコミカルさや周りの人からの慕われ度も含めあんま悪いやつそうに見えない。メイベルは「本当に19歳か?」と思うほど後先考えずに行動するためちょっと嫌いになりそうだが、これくらいの方がグングン物語を推進してくれるのでまあいっかくらいではある。

そして明らかになるホッパーズ計画。ビーバーの跡をつけるメイベル。ビーバーが大学に入るために教員証ピってしてるのとか可愛い。ビーバーロボに意識を移し替える計画を知るや否やメイベルは決行。サムと助手2人の静止を振り抜いてメイベルはビーバーに。サムはあくまでも「観察」のために計画を運用していた。そして自然界に人間が介入するのは御法度だ。メイベルはビーバーを森に戻すと言うことで介入しまくることこの上ない。ヤバヤバだ。

 

森で、はじめて動物の目線を獲得してテンションアゲアゲなメイベル。楽しそう。色々あって森の王のビーバー・キング・ジョージに会う。ジョージは動物たちの王国を統括しており、ルールを掲げている。一つ目が全員と知り合うこと。二つ目が食べたい時に食べ、また、食べられること。一つ目の理由が名前を知ってるものには怒りにくいからってのがおもろい。全国の経営者には見習ってほしい。二つ目はナチュラルな弱肉強食肯定。これは調理しづらいししゃーない。見てないから内容は知らんがこの辺気になる人は『ビースターズ』とか見とれといった話なんでしょう。

ジョージに森から動物がいなくなった理由を尋ねたところ、動物だけに聞こえる不快な音波が原因だとわかる。そしてその音波が出るスピーカーを設置したのがジェリー市長だった。悪い奴め。スピーカーを完全に破壊し、みんなで森に帰るメイベルたち。大量のビーバーたちと再び池にダムを作るシーンがガチで楽しそう。純粋に楽しいシーンが多かった本作。しかし、ジェリーは再びスピーカーを設置。メイベルとジョージは「評議会」の力を借りることにする。

評議会とは哺乳類の王・ジョージに対し、魚類の王、爬虫類の王、両生類の王、鳥類の王、昆虫の王たちが集まるものだった。評議会の王たちに、メイベルは森を守ることを積極的にアピールするも、盛り上がりすぎてしまい、議論はジェリー暗殺へと向かう。このいざこざの結果、メイベルは昆虫の王を殺してしまい、ジョージ共々、評議会の標的となってしまう。昆虫の王は蝶なのだが、メイベルが多分人間の時の癖っぽく、目の前の蝶を潰してしまう感じがコミカルで面白かった。メイベルは動物を大事にする性格なのになんでやねんと言った思いもあるが楽しかったからOKだ。昆虫の王が潰された結果、後を継いだのはタイタスという残虐な幼虫だった。

 

 

というわけでメイベルたちはジェリーを守れるかどうかという話。だいぶツイストしたね。でも面白かったのでオールOKです。本作の良点は割と多いんですが、話がどんどんツイストしていってずっと見れるというとこですかね。メイベルがビーバーになって森を救おうっていう目標は一時的ではあるもののひとまず達成される。でもやっぱダメだった。→評議会招集→やりすぎた、ジェリーを守れ!といった形で飽きが来ないです。最近の海外アニメ映画って良い意味でも悪い意味でも結果と過程がある程度見え透いてたのでなおさらよかった。本当に比較して申し訳ないが『エリオ』とかはグロードン出てきた時点でほぼ全ての展開が読めたからね。そういう意味ではジェリー守れ以降もその筋で行くのかと思ったらジェリーはあっさり捕まるし、うまいことこっちの興味を持続させてくれた。

 

後、キャラの魅力もかなり高い。これは中身的な面でもそうだが、見た目がかなりいい。この時代に…って感じもするが、本作の強さはビーバーたちを含めた森のキャラのかわいさによるものもかなり大きいと思う。トカゲのやつとかクマとか、おっとりビーバーとかのサブキャラがやっぱいいですよね。ピクサー作品はラセターの空気を引っ張っているとはいえ、デザインとか見た目?ってかまあ言語化しづらいけど、とにかくワクワクさせて欲しい。例えばおもちゃの世界では主要キャラはもちろん、Mr.マイクとかMr.スペルとか、このおもちゃがみたいな感じで楽しませてくれたやん。ニモとかモンインもそうだ。これが、登場人物が「人間」になってくるとどうしてもワクワクが薄れてしまう。そういう意味では確かにあんまり手がでてなかった「動物」というのはすごくよかったんだと思う。ありきたりすぎてようやく触れたという感じでもあるのか?

かわいさでさらに言及するとミニオンっぽいかわいさがある。キモカワではなく、いっぱいいてわちゃわちゃしてるかわいさね。動きのアホそうさも良くて、日本版ポスターの歩いてるメイベルビーバーは必見。全てにおいてアホそうで可愛い。

 

ストーリーは純粋にいいんですが、俺が最近口酸っぱく言ってる「対話」がちゃんとあってよかった。ジェリー市長の「君がいて俺がいるから話し合えばなんとかなるだろう」っていうのはすごいいいセリフだと思った。一見問題を保留しているようにも聞こえるが、むしろこれは勇気の保留だと思う(もこうじゃない)。世の中は複雑な問題に溢れていてそれに相対する時、見つかるのは必ずしも単純な答えじゃない。辛抱強く、話し合って妥協を見つけていかねば見えてこないものがきっとある。まあその結果が「道路のルート変更」なのは子供向けアニメの限界を感じた。仕方ないが。

後良かったのは「善性への希望」ですね。ジェリー市長は序盤悪人?っぽく描かれているが決して突き放した描かれ方じゃない。スピーカー置いて動物追い出したりしてるが、人間界においてはジェリーは人気者だし、しかもそれは「人気になるためならなんでもする!ヒッヒっヒ」みたいな感じではなく、純粋な善性を胸にしたものっぽい。この善性への希望を最も表すのが中盤のジョージのセリフだ。ちょっとなんて言ってたか忘れたが、多分「いい人だと信じたいから信じる」みたいなやつだったと思う。メイベルはジェリーに対してはもちろん、手伝ってくれないサムなど、多くの人に攻撃的だが、ジョージの言葉がそこに響いたであろうことは間違いない。

 

本作の旧ピクサー感はやって欲しいこと全部やってくれるところにも存在する。やれそうなことはとりあえずやっと来ました感というのかな。モンインのドアがいっぱいあるところとか。なんか上手く言えないや。本作でホッパーズ計画から人間を作り出すところにそう感じたんですが、誰か言語化上手い人がいればそれは頼んだ。

 

ただの環境保全映画で終わらず、よくある「人間=悪、自然=善」みたいな単純二元論に縛られてないのもいい。というか環境保全映画からはちょいちょい離れていくし。メイベルを突き動かすものは、それはもちろん自然への愛情もあるだろうが、「おばあちゃんとの思い出の場所」に絶対にある。だからラストカットは冴え渡ってて最高だと思う。そんなこんなでこの映画は環境映画ではないね。やっぱね。

深く考えようとしたら、おばあちゃんを亡くしたことにより、誰かと心を通わせることができなかったメイベルが友達を見つける話、と無理やりとることもできなくもないが、そんな単一的なテーマ性があるのかどうかわからんくらい、ゴテゴテの装飾(キャラの魅力やシナリオ、映像の楽しさなど)で飾りつけてるとこも旧ピクサー作っぽい。我々大人はこの映画からしっかり学ぶべきだが、子供たちは最悪楽しめればそれでいいんすよ。いつか見返した時に学んでくれればいいので。

 

やっぱ最近のピクサーに足りてなかったものは「楽しさ」ですわ(雑語り)。まあ、そんな雑語りを勘案してもしなくても本作の「楽しさ」がすごいことに変わりはないので見に行くのが吉です。別にそんなに感動とかはしないが(するかも知らんが)、これぞピクサーです。みんなも見にいって応援してください。グッズ展開がわけわからんくらいしょぼいことに俺は怒ってるからな。