
タイトル:刃牙道
原作:板垣恵介
監督:平野俊貴
形態:配信アニメ
既か未か:未
『刃牙道』1~13話みた。
人気長寿漫画シリーズ『刃牙』の宮本武蔵編。日本三代グダグタ長寿漫画「カイジ」「ジョジョ」「刃牙」のうちの一つ。(ジョジョ好きな人に言ったら怒られそうだが最新までちょこちょこ読んでるので許してほしい。)
そもそも刃牙シリーズとは、地上最強を目指す男どもの物語で主人公・範馬刃牙はそんな考えの元、父親である勇次郎にほぼネグレクトを受けていた。色々あって母を殺した勇次郎より強くなることを目標に刃牙が戦い続ける話だ。
そして勇次郎との決着は前シーズン『範馬刃牙』で終わった。アニメ的にも締まりがいいのでこの『刃牙道』はアニメ化しないと思ってた。
カイジ、ジョジョが一応やることがあるのに比べ刃牙道からはもう完全に蛇足でしかない。蛇足でも面白かったらそれでいいのだが刃牙は回を隔てることに面白く無くなっていってるとの声が有力。本作も現代に復活した宮本武蔵と戦うという目的がよくわからん始末。
そんな『刃牙道』ですが、俺は結構好きです。詳しくは14話以降が配信されたタイミングで言うと思うが、ただただ強い武蔵と戦う「だけ」にはなってないところが好き。底辺YouTuberのように「原人!復活させてみた!!」だけだったピクル編に比べて、武蔵を復活させることによる不都合、現代と戦国のギャップを描いてたのが好印象。
あと、迷展開と言われている本部の活躍も楽しくて良かった。これも詳しくは後々語ろう。
ネタバレあり
範馬刃牙(島崎信長)と範馬勇次郎(大塚明夫)の"地上最強の親子喧嘩"を経てグラップラーたちは退屈していた。どのような状況でも欠伸を噛み殺す毎日。そんな中、世界一の格闘マニアである徳川光成(辻親八)が所有する東京スカイツリーの地下深くの研究所では禁忌の実験が行われていた。それは伝説の剣豪、宮本武蔵(内田直哉)の亡骸からクローンを作り出し復活させる研究だった。武蔵の復活を直感的に悟るグラップラー達。時代を超えた最強を決める異時格闘技が始まる。
現代に復活した宮本武蔵。武蔵は現代に興味を持ちつつも、そんな武蔵に興味を持ってやまないグラップラー達と勝負していく。アニメ的な話を言うと作画含め、武蔵の声優内田直哉も良かったし満足。と言うわけで展開とかの不満が大きなものになるがこれは原作の問題です。聞いてるか?板垣。
13話までの内容はジャックvs武蔵まで。グラップラーの欠伸→武蔵復活の流れを3話くらいかけて行い、そこからは武蔵のvs刃牙、vs独歩、vs烈、vs渋川、vs勇次郎という流れ。この間に本部がいろいろちょっかいかけたりする。
最初の展開についてだが、長い。武蔵が復活してからは純粋に楽しい時間なので武蔵復活までに異様に理屈をこねくり回したりするところが腹たつ。そして徳川のじっちゃんは倫理的問題をクリアする気はゼロなのでこの話し合い自体が無駄という不毛。あくびを抑えるために花山が勇次郎と戦ったりするが大した盛り上がりもないまま序盤はすぎる。序盤を我慢さえすれば楽しくなるので頑張って見た。板垣の理屈を異様にこねくり回して結果、言ってることが矛盾する感じは絶対に悪癖ですよ(強さとはのくだりとか)。この論が回り続ける感じは実際にプレイヤーとして考えたり喋りまくってるうちは楽しいが側から見たら面白さはかなり薄い。『マトリックス:レザレクションズ』でマトリックスの続編を作る意味についてさんざ会議していたが、その結果見つけた「意味」を教えてほしいわけで道中はそんなにもいらんよ…って思ったのに似てる。
本『刃牙道』ではこれまでの刃牙シリーズから明確に新しい道を模索しているっぽくてそこが好み。例えば、キャラのバランス調整や強さへの問い直しだ。
バランス調整に関して、これまでは「勇次郎最強!次が刃牙!」みたいな感じに加え、登場した新キャラにただ旧キャラがボコボコにされるだけという本当にインフレ漫画でしかなかった。そしてそれに逆張ったアライJr編は奇跡が起きるレベルのクソだった。あちらを立てれば…ではないが刃牙シリーズは本当にどっちかしか立てることができないのかってレベルでバランス調整が下手クソ。そして常に立てられ続けたのが刃牙だった。主人公の戦いが一番つまらない漫画も珍しい。
一方で、今作ではいきなり、大ボス武蔵vs刃牙をやるのがいい。また、武蔵はこれまで護られていたキャラ達を徹底的に揺り動かしながらも、一応グラップラー側にも花を持たせるなど塩梅が上手とはいえないものの頑張ってる感がある。ただただ強かっただけのピクルと大きな違いだ。
そしてバランス調整として本部が活躍し出す。本部は初登場はセリフのフォントが怖く、野良の最強を感じさせていたキャラだが、最強トーナメント戦で1回戦負け。しかも、武術知識保有者としては力士はまわしをつかむために小指が強いという当たり前情報を見落として、力士相手に小指を取って負けるという恥ずかしすぎる負けを見せた。本部は一応このあと最強死刑囚相手に善戦したりはするんだが、本作で垢抜け。なんでもありの古流柔術というキャラ性を引っ張り上げて活躍させたのは妙な感動がある。読者が本部を噛ませとして舐めていたことを表現するように徳川のじっちゃんは本部を舐めまくる。このメタ視点も良かった。
強さの問い直しはこれはほぼ毎回やってるが勇次郎が強すぎるせいで「強さ=我を通す力」、「戦いには純度が必須」で固定されかけていたが、勇次郎に渡り合えて、会話も対等にできるキャラとしての武蔵の登場により、この論に新しい道が見え始める。ピクルですら勇次郎と戦わなかったことを思い返すに、バランス調整の話に戻るが、勇次郎という聖域をちょっとずつ崩そうとしていたことが伺える。
初戦が刃牙戦なのが本当にいいところだ。刃牙の「負け」を本当に久々に見た。リアルに柳に負けて以来じゃないかな。童貞を卒業してからの初負けだ。勝負自体はそんなに面白くもなかったが、要所要所は良く、武蔵の「刃牙、お前を容赦さん」のシーンが好き。もっと引きでじっくり見せて欲しかった。
次戦がvs独歩。「愚地独歩です…。(ドヤ)」からの「なんだァ?てめェ…」は有名すぎるが何度見ても笑ってしまう。武蔵の前に現れた独歩は名乗る前に徳川のじっちゃんからいつものあれを見たいとせがまれる。それこそ、名乗りよりも自己紹介になると。独歩も満更でもなさそうに了承し、ブロック割やビール瓶斬りを見せる。そしてハイキックで木片を真っ二つに。ドヤ顔の独歩に対して、武蔵は釈然とせず「武というよりは舞踊のようだな」とか言う。独歩、キレた!!
武蔵は独歩を舐めまくり、独歩くらいなら飯前だと言ってその通りに1発で伸す。そしてエア斬撃で袈裟を切る。武蔵はエア斬撃を使いまくっており、これは主要キャラが死なないための苦肉の策だ。しかし、エア斬撃はイメージ共有に過ぎず、精神的なダメージ以外は与えられない。と独歩が言い2人の戦いは武蔵が真剣を持った形で再戦に。しかし、再戦もまたもや一撃で終わり、独歩は武蔵に気を遣われさえする。完敗した独歩。「暫くは引きこもりてえ」
独歩のことは嫌いじゃないがレベル的に一歩劣ってね?って思ってたのでここでしっかり敗北したのは好感。アライJr編での醜態もこれにて浮かばれるもんだ。
そして衝撃の烈戦へ。これは文句なしに面白かった。ピクルvs克巳くらい好き。烈は消力の完全習得によって武蔵と戦おうとする。刀では羽は切ることが出来ないと言う郭海王。そのカットの瞬間、羽のようにひらひら舞う葉を4等分する武蔵。この絶望感がいいね。
地下闘技場にて初の完全武器解禁ルール。「烈海王敗れたりッッ」が良い。序盤の文字通り使える全てを使って攻撃していく烈。しかし、うまくいかず烈は捕縛されてしまう。武人として殺されるより屈辱なのは殺されすらしないことだ。烈の悔しさに応え、斬殺の準備を始める武蔵。「刀剣の一太刀に…回転って見せい!!」ここで消力本番を見せる烈。しかし、正中線から血が出る。郭海王は「消力敗れたりッッ」と確信するも、烈と武蔵は気づいていた。本来仕留められていたはずの斬撃を朝での傷で済ませた烈に。「今一度 一太刀を」求める烈。烈を切り殺す武蔵。烈海王死亡。衝撃の展開。
烈は死んだが今頃異世界でよろしくやっているだろう。烈は考えてみれば割と負けたこともあったが、格のあるキャラだったので、死亡は衝撃。死刑囚編の5人は刃牙>花山、烈>渋川、独歩のイメージなので烈が死んだことによって話的にも緊張感が出てきた。割とこの展開は連載時、叩かれたらしいがキャラ多すぎるし、烈は好きだが花のある試合で死んでいけたので個人的にはセーフ。
渋川は割愛。勇次郎戦も面白かったが特段言いたいこともない。無刀のくだりがわけわからんのと決着ぼかしたのは良くないと思った。合気道やってる身としては楷書→叢書→無書のロジックは面白いと思ったが実際どうなるのか見せてくれなかったからね。ってかエア斬撃こそが無刀では?
古流柔術の使い手・本部。本部は武蔵の出現に自分こそが刃牙や烈、勇次郎までもを「守護らねば」ならないことを理解する。最初、噛ませの雑魚キャラだと思ってた読者と同じく、その発言を内心バカにする刃牙や徳川のジジイ。でも本部と相対して行っていることの真実味を理解する。烈が死んで以降、烈を守護ることが出来なかった本部は本格的に動き始める。勇次郎に対しても自分が守護るから武蔵と戦わんほうがいいと宣告。勇次郎にはブチギレられる。その後、武蔵の無刀から文字通り、勇次郎を守護って勝負をなかったものにする本部。武蔵に立ち向かおうと意気揚々のジャック・ハンマーに対しても、先に行くなら俺を倒してからいけをやってボコボコに勝つ本部。そして次なる守護らねばならない存在がピクルであることに気づく。
13話はここまで。
後半への布石として武蔵が現代にうまく馴染めない様子がありありと書かれる。武だけでは成り上がれない現代にギャップを感じる武蔵。烈を殺した際は、武蔵自身は勝者にも関わらず誰も武蔵に歓声を上げる者はいなかった。それだけでなく、現代においては武の価値自体がある種、自己満足的になってしまっているのに対して、武が自己表現だけでない生業だった時代の武蔵というギャップもある。武蔵は武を通じて、のし上がり、名声を得たい訳で、それは現代グラップラーの武への向き合いとは少し違う。ここから武蔵は国盗りを始めていく。続きが楽しみだ。
武蔵自体のキャラデザも初めて見た時は常に目の焦点があってない感じも含め、普通に怖かったが、アニメを通じてかなり好きになった。『バキ道』以降は全体的にキャラが太くなりすぎるので諸々含めて『刃牙道』まででいいかなという気にはなる。武蔵は二天一流のポーズも見てて楽しいし、ピクルみたいな執拗に相手をイメージ化するやつも少ないし良かった。
刃牙シリーズは前述した通り、論をこねくり回し過ぎてわけわからんくなってくるのが定例。死刑囚編では「負け」の定義をこねくり回し過ぎた結果、ドリアンが精神崩壊して、柳とドイルは負けても逃げ続けた。アライJrは戦いの純度について振り回されまくった。それに比べて、武蔵の現代とのギャップというテーマはしっかり一つの軸として生きているところも『刃牙道』の良さだろう。ひとまず後半を楽しみに待ちます。