
タイトル:カーズ/クロスロード
監督:ブライアン・フィー
形態:映画
既か未か:既
『カーズ/クロスロード』見た。
久々に見返した。ピクサー品、カーズシリーズ第3作にて今んところカーズ映画シリーズラストの作品。監督は前作、前々作のジョン・ラセターからチェンジ。知ってる人は知ってると思うが、ジョン・ラセターはそのピクサー興隆、ディズニー再生という天才的な手腕に対してスケベ親父すぎるという欠点があった。そしてピクサー社内では女性社員がハグされないようにする動きをスケベ常習のラセターになぞらえて「ザ・ラセター」と揶揄してたりしたらしい。(諸説あり)。想像してほしい。君が所属している部活やクラス、会社でセクハラ行為に自分の名前がつくダサさを。俺はこういう話が大好きだ。ラセターをバカにしたいみんなは調べてみると面白い話がいっぱい出てきて楽しい。なお、ラセター自身の手腕がすごかったことは否定できんがね。
何が言いたいかというとピクサーについては結構無限に語れるってことね。今までも記事に書いて通り、私はディズニー畑出身なので筆が乗ることこの上ない。今映画に関してもラセターが宮崎駿に「ライトニングは引退したよ、、(超意訳)」的なメッセージを送ってたり楽しい裏話がいっぱいあるんだが、そんなこと話してたら時間なくなっちまうよね。なのでカーズシリーズに絞って話します。
『カーズ』はピクサー初期作に対してある種変異的な側面があると思ってて、それは人間の影がないってことですね。これまでの作品、そしてこれからも考えて人間が存在しないピクサー映画はカーズだけじゃないでしょうか。そんなカーズ1はグッズ化のしやすさとかもあってめちゃくちゃヒットしたイメージがある。まあ調べたらそんなこともないっぽいわ。まあただ我々世代のちびっ子で知らぬ人はいないんじゃないでしょうか。ドンピシャ世代だし。
映画としてはブイブイ言わせてた新人、ワンマンタイプが人との触れ合いを通じて勝利より大切なものを知るというまああるあるとはいえシンプルに良作。というか先に言っちゃうが3作で最も優れた作品と言える。
『カーズ2』は触れたくない。別につまんなくはないんだけど、子供向けに見せかけて巧妙にメッセージを入れ込むピクサー作にしては圧倒的にメッセージのない作品。ただみんなの大好きなメーターが暴れ回るのをみるだけの映画という残念さがある。まあメーターが好きな人にはいいけど、カーズをレーサーの成長物語として見てる我々(大半がそうだろ)からは苦虫を噛み潰した表情しかできん。なんか全国回ったりするから日本とかも出てくるが「いや、別に、、」って感じ。カーズを見ていく中で2を飛ばしたところで何の問題もない。(まあキャラメイクとかはいいので3であまりにも無視されてるのは可哀想だが。)
そんなわけで今作『カーズ/クロスロード』。ブイブイ新人が1ってことで誰もが想像する通りその引退について書かれるのが最終作。いわゆる終活映画ですね。好きよ。時代のうねりに飲まれるマックイーンはどのような答えを出すのか。亡き師ドック・ハドソンの道を辿るのかという整いすぎた舞台。
結構好きなんですがそれ以上にディズニー好きなので文句多めの感想になっちゃうと思いますが結論言うと結構好きです。好きだから文句言っちゃう系の感想と捉えてほしい。
ネタバレあり
大人気、ベテランレーサーとして順風満帆のライトニング・マックィーン(オーウェン・ウィルソン)。しかし、あるレースにて最新テクノロジーを駆使した新人のジャクソン・ストーム(アーミー・ハマー)に逆転優勝を許してしまう。マックィーンはストームをライバル視しながらレースを続けるもキャル・ウェザーズ(カイル・ペティ)をはじめとする旧世代レーサーは引退や解雇などどんどん周りからいなくなってしまう。世代交代の波の中、マックィーンはストームへの焦りから無理をしてしまいクラッシュしてしまう。事故から4ヶ月後、療養を終えたマックィーンは自身の今後について思いを馳せる。その時頭に浮かぶのは亡き師ドック・ハドソンの姿だった。マックィーンは仲間の後押しもあり復帰に向けて動き始める。
そんなわけで冒頭から10分くらいでブイブイ言わせるライトニングが世代交代に焦り始めるまでチャチャっとやっちゃう。新キャラ、キャルはダイナコ石油をスポンサーに持つライトニングの同僚ポジ。どうやらキング(1に出てきたベテラン)の甥っ子ぽい。
焦ってクラッシュしちゃうとこはほんと成長してねえなって感じなんだけど、世代交代の波が近づいてきてる感覚はよくわかる。まあいきなり文句なんだけど、あんまライトニングが時代遅れって感じはしないよね。この焦りも含めてまだ結構若いなって感じ。この感覚は『007/スカイフォール』に感じたことと一緒で、前作まで新人だったボンドがいきなり老兵扱いされてたレベルの違和感がある。性格的な面が特にね。もっとどっしり構えててほしいのよ。
まあそんなもんだから当然引退もする気はなく、復帰に向けてトレーニングを始める。若手ストームに勝つためには最新技術が必要だが、そんなお金はスポンサーのラスティーズにはない。すると何とびっくり、ラスティーズ兄弟は会社を売り払ってライトニングが最新トレーニングできるようにしていた。本作で一番感動したのはこのシーン。積み重ねてきた縁が自分を救ってくれるってシーンに弱い。兄弟は一切泣き言言わないし、でも兄弟とライトニングが静かにシンボルとか見つめるシーンは泣ける。いい話やで、ほんま、、。
そして新たなスポンサーがライトニングのファン、スターリング。まあイーロン・マスクみたいなもんだろ。今作ではストームに加えスターリングがライトニングに対する現実という敵となる。まあ別に悪人ではないんだけどね。トレーニングがうまくいっていないのを見てスターリングはライトニングに引退を薦め、レーサーではなくセレブとしての生き方を与えようとする。まあスポンサーだからね。もしこれ以上負けたらライトニング自体のブランド価値が下がってしまうということもある。しかし、泣きの一回。フロリダのレースで優勝したらライトニングが好きなタイミングで引退という約束を取り付ける。
復帰に向けたライトニングのトレーナーがクルーズ・ラミレス。中盤の衝突でわかるように彼女自身、実はレーサーになりたかったという過去を持つ。
彼女と、ついてきてくれてるルイジとグイドとライトニングが楽しくトレーニングをするのが基本のあらまし。その中でかつてのドッグの師や友に会ってライトニングが自身の考えを変えていくという話。ロードだけに中途半端にロードムービーっぽくもある。ややこしい。

まあ全体的に悪い意味で何したいかわかるとこはあるんすよね。例えば、サンダーホロウっていう何でもありのレース会場でライトニングとクルーズがワイワイやるとこ。ここは素直に楽しいんですが作劇上の意味があんまりないというか。というのもクルーズがトレーナーとして役立たずすぎるところが怪しい。もちろんラストの展開を考えれば必要なキャラだし、彼女自身に魅力がないわけではないんですがじゃあトレーニングについてきた意味が皆無に近いんですよね。なぜならサンダーホロウ的な「特訓」、だから要は亀仙人の石探しみたいに一見効率的ではないけど大切なものを学べる特訓は本来教える側が用意すべきものなので。最初からクルーズをライトニングに「教えられる側」として書いてたらこんな微妙な違和感はなかったんですが。
この立ち位置のややこしさがかなり尾を引いてる。クルーズとライトニングの関係は本来、「ライトニングが教える」じゃないとややこしくて、まあ100歩譲って「お互いに教え、教えられる関係」じゃないとキツいんすよね。だってクルーズがライトニングの邪魔してるだけに見えちゃうし。というか最初からライトニングを教える側と書いた方が絶対収まりがいい。だって教えてる中でドックの感情に気づくっていうのが綺麗だからね。
ライトニングがラストギリギリまで引退するのかどうか決断できてない気がしちゃうのが終活映画としてはダメなところですね。本来、ドックの影を追う中で「自分はもうレーサーとしては終わりだけど、でもそれより素晴らしいものが見つかった」というストーリーにすべきところを「やっぱレーサーとしてやってくぞ」が上回ってるんすよね。この歪さは中盤、森の中を走っててライトニングの塗装が剥がれてくシーンのカタルシスがすごいところがマックスに表してる。しがらみや包んでいたものから解放されるというシーンなんだけど、その結果行き着くのが果たして復帰なのか?というところっすよ。引退じゃね?まあここは好きなシーンだけどね。わかりづらいだけで全然引退を決意したシーンにも見えるっちゃ見える。
まあ最終的な決断に関してもライトニングが引退を決意しないせいで「クルーズに代走させてラストだけ勝たせて優勝かっさらっていった」的な卑怯さにも見えんでもなくなってしまってる。もっと苦渋の決断として欲しかったし。そんな「勝った、ラッキー」みたいな表情せんといてくださいよ。
そんなこんなで物語の決着点がストームとスターリングにギャフンと言わせることになってしまっていたのが残念。ライトニングが時代遅れの自分を受け入れて、それでもその中で素晴らしさを見つけるってのが終活映画でしょ。(ピクサーだからキツいが死ぬのもあり)。まあ良い子の皆が悲しくなっちゃうからよしたんでしょうかね。知らんが。
いや、でもピクサー作品で何かを手放して何かを得るってのは全然してるし(『トイストーリー3,4』とか『カールじいさん』とか)純粋に甘めになってるのは気になりますね。
めちゃくちゃ文句ばっかだけど結構好きです。好きだからもっとこうして欲しかったが出てくるわけで。旧作キャラがいっぱい出てきたのも嬉しい。チックとか好きなんすよね。ラジエーター・スプリングスをあんま見れんかったのは悲しいがそれはスピンオフでいいでしょう。
まあやっぱ終活するにはライトニングの格がちょっと足りんかったところはあるかもね。まだ若く見えるんよ。そして結局引退しなかったのも。時代遅れの老兵は今まで通りの活躍以外の道を見つけてほしいのよ。トム・クルーズでさえ「いつまでやんねん、、。」の感情で見ちゃうし。今後はサポーターになるんだろうが引退を明言して欲しかったね。「アンタはもうーーー闘士(レーサー)として終わったんだよッッ」
もうカーズシリーズでやれることは多分ないので更なるスピンオフ待ちかな。映画は出んでしょ。でも後継を育てるってポイントを深めてくれるなら4あった時も見るよ。